【公開日】2025年10月

ヤッター先生の経歴:矢田 雅久氏。都内公立で43年間教職を執り、その間、2校で14年間校長を勤める。また、東京都で教育研究員・教員研究生・開発委員、品川区で校長会会長・就学相談委員長等を歴任。現在、品川区教育委員会で教育アドバイザーとして勤務。※こちらのコラムでは学校の先生からいただくお悩みに対して、ヤッター校長先生にご回答いただいていますが、ご紹介する回答内容が全ての場面や児童に対して有効であるということではありません。お悩みに対する対応方法は児童やクラスの実態により大きく変わるため、ここでは、取り入れていただきやすい具体的な対応策を挙げていただきましたので、ご参考にしていただけますと幸いです。
保護者とより良い関係を作る対応方法を教えてください。
1.【教師と保護者は、児童を教育する大切なパートナーであることをお互いに理解する】
学校と保護者は「児童を一人前の人間に育てる」という共通の目的を持った仲間であることを双方が認識することが第一歩。
担任は、校長の学校経営方針と担任の学級経営方針をしっかりと保護者に説明し、理解してもらうことが大切です。
そのために、学級だよりや保護者会、個人面談、日々の連絡等をまめに行い、日々の人間関係を深める努力が必要となります。
2.【日々の連絡で連携し、信頼を得る】
1. 児童の課題や困り事だけではなく、よいことや、褒めたこと、成長したと思ったこと等の天使の電話をたくさんしましょう。それが人間関係を築く基となります。
そのためには、児童の様子を一日5人はしっかり見て、善い行いを中心にして記録しましょう。
2. トラブルや暴言、逸脱行動が頻繁にある児童の保護者は、学校からの電話や連絡に敏感になり、うんざりしている場合が多いので、対人トラブルは必ず連絡しますが、他のことは少し控えることも必要です。
ただし、保護者の思いを尊重しすぎて、問題行動や他の児童とのトラブルが起きた場合に全く連絡をしないと、対象児童の保護者に「学校では規律を守っているよい子」だと思われる場合もあります。
相手が嫌がっても伝えるべきことはしっかりとお伝えすることも大切です。
3. 学校公開、個人面談、保護者会、PTA活動で保護者が来校した際は、笑顔であいさつをすることはもちろん、一言でもよいので出来る限り「児童に関する良いこと」を伝え、言葉を交わしましょう。
この短い雑談の積み重ねが人間関係の構築につながります。
3.【ケガや体調不良の際、適切な連絡で信頼を得る】
1. けがの場合は保健室で養護教諭が応急処置をし、すぐに管理職、学年や生活指導主任に報連相して指示を仰ぎ、保護者に連絡をします。
その際にいつ、どこで、どのような場面で、どんな怪我があったのかを丁寧に説明しましょう。併せて、処置内容や今後の対応についても伝えます。
2. 病院に連れて行く場合は、救急車の有無、誰が付き添うか、保護者とどこで合流するのかを管理職としっかり打ち合わせをし、保護者にも知らせます。
また、診察・治療が終わったら、今後の学校の対応や家庭での処置についても説明しましょう。
3. 対人トラブルや腫れ、変色、手当の跡が家に帰っても残るような怪我は、児童が帰宅する前に必ず保護者に一報を入れましょう。
4. 特に被害者・加害者の関係が成立するような場合は、管理職と相談し、トラブルの内容や学校での指導の概要について、まずは被害者へ、その後、加害者へ丁寧に連絡します。
できれば加害者側から謝罪の電話を被害者宅に入れてもらうようにしましょう。
4.【ピンチは、チャンス・・・保護者から相談やクレームがあった場合こそ、信頼を得るチャンス】
1. クレームが大きな問題に発展してしまうのは、多くの場合、最初の対応が上手くいかなかったことが原因です。
だからこそ、初期対応はスピーディーに、そして丁寧に行うことが大切です。
☆多くの保護者にとって大事なのは、怒りや不安を丁寧に聞いてもらえること、そして素早く対応してもらえることです。
加えて、管理職まで話がすぐに伝わると、より安心し、満足感につながります。
だからこそ、丁寧に話を聞き、速やかな報連相で学年や管理職に伝え、具体的な対応をしていくことが大切です。
2. 常に相手の立場や気持ちになって物事を考え、対応することが求められます。
どんなに理不尽だと思うような要求であっても、相手にはそれなりの根拠や考えがあります。
また、こちらにミスや落ち度があった時には、素直に謝罪することも大切です。
3. 内容の濃いことを素早く行う「圧縮思考」で物事を考えましょう。
スピードがとても大切です。
例えば、10日かかるところを1日で対応してみましょう。
スピードが要求される案件は、慣例や慣習は省き、その時に良いと思うことを提案し、管理職の了承を得たら最速で実行します。
場合によってはその場で電話をかけたり、判断に迷ったらすぐに管理職に相談することも大切です。
4. 連絡帳での訴えは必ずコピーを取って保存しましょう。また、文章での返答は誠意や考えが伝わりにくく、説明不足になりやすいです。
連絡帳には「本日電話で改めて話を聞かせていただく」旨を記し、その後、電話できちんと対応するのが望ましいです。
≪保護者との関係をよりよくするために・・・≫
1. 保護者対応は、徹底して丁寧に行いましょう。
万全と思ったらさらに一歩、完璧と思ったらもう一歩と心がける。これ以上でき
ないと思う場面でも、なお一歩踏み込む姿勢が大切です。
丁寧すぎて不快に思う保護者はほとんどいません。
2. 事故や怪我、児童間のトラブル、強い指導を行った場合は、必ず児童が帰宅する前に保護者へ一報を入れましょう。
児童から先に話が伝わると事実と異なる説明になる場合もあるため、丁寧に確認して伝えます。電話がつながらない場合も、留守電や着信履歴で記録を残す姿勢が大切です。
3. 特に児童の心に残るようなトラブルや怪我などで相手がいる場合は、必ず両者に正確な事実とその後の指導等を丁寧に連絡しましょう。
4. 保護者と電話で連絡が取りにくい家庭の場合は、その事情を考慮して、複数の連絡方法を用意しておきましょう。
課題や問題行動が多い児童の家庭は、他の家庭と比べて、連絡が取りにくい傾向があります。
電話がつながりやすい日時や連絡方法、父母・祖父母・勤務先・自宅・メールなど、別の連絡先も確認しておきましょう。