シューズデザイナー 大山一哲先生

【公開日】2025年4月

靴は命を運ぶ道具です。そんな誰にとっても大切な靴をつくる仕事には、いつも実直に向き合わないといけないと思っています。

ーこれまでのキャリアを教えてください

靴ブランド(numero_uno_io)を展開、独創的で機能性が高いデザインの靴をいくつも発表し、国内外から高く評価されている。
また、日本では37人のみが持つシューフィッターの最高位『マスターオブシューフィッティング』を取得し、日本における靴づくりの名門校、エスペランサ靴学院の学院長も務めている。

ーこれまでのキャリアを教えてください

エスペランサ靴学院で製靴技術を学んだ後、更なる技術向上を求めて渡伊。靴作りの本場ミラノで修練後、家業の大山製靴にて、製造・企画・営業と、靴の仕事に関する全ての現場を経験しました。その後、株式会社ロカシューを創業、国内のみならず海外にも自身の靴ブランド(numero_uno_io)を展開する傍ら、靴講座や講演会の講師を務めています。現在はエスペランサ靴学院学院長、西成製靴塾塾長、西成高校靴づくり部監督を兼務し、次世代の靴業界を担う若者の育成にも積極的に取り組んでいます。

ーシューズデザイナーを目指したきっかけ

実家が靴メーカーで、物心ついた時から靴を箱詰めしたり中敷きを入れる作業を手伝う中で、靴に触れる機会は多かったのですが、将来自分でも靴を作りたい!という気持ちは全くありませんでした。シューズデザイナーという職業に興味を持ったのは高校生の時です。街を歩いていて、偶然、実家で作った靴を履いている人を見かけた時に、衝撃が走りました。
作業を手伝う中で実家で作った靴のデザインは自然と覚えていたのですが、実際に履いている人を見たのはその時が初めてで、ひょっとして僕が箱詰めしたり、中敷き作業をした靴かもしれないと思うと、言葉にできないほど誇らしい気持ちになりました。そこから、自分自身が作った靴を多くの人に履いてもらうことが夢になり、技術を学ぶ中で明確な目標になりました。

ー小さい頃はどんな子どもでしたか?身につけて良かった能力は?

小学生の時は比較的おとなしい子供でしたが、年齢を重ねるとともになぜか学級代表や生徒会長を任命されたり、雄弁大会で優勝したり、演劇の主役をしたり、気がつくと人前に出ることが多く、人の輪の中で中心にいることが増えていきました。
これは多文化共生の街で生まれ育ったことが大きく影響しているのだと思います。僕が育った街は人との距離が近く、どこに行っても、誰と会っても、受け身ではいられないほど自分の意見を求められます。そんな環境下でコミュニケーション能力が育まれたのだと、今では故郷に感謝しています。
仕事をする上でも大いに役立っていて、海外の人の前でも堂々と自身のブランドのプレゼンをしたり、どんな人が相手でも物怖じせず商談の機会を掴んだりしています。また、得意なことになるかどうかはわかりませんが、僕は声が大きい(笑)。これも自信があるように見せる要因になっているのではないかと思います。しんみりした雰囲気が苦手で、皆で一緒に何かをしたり、わいわいすることが大好きなので、僕の会社ではたくさんの意見を交わしながら、みんなの想いを込めて商品を作り上げています。靴づくりは職人が黙々と作業しているイメージがあるかもしれませんが、コミュニケーション能力も非常に大切です。

ー思い出に残る担任の先生とのエピソード

中学校に入学した時、新任の先生が担任になり、3年間ずっと同じ先生が担任でした。
先生は教員になりたてで、とにかく熱い。中学生の僕たちは思春期に入ったこともあって、先生のやることなすこと、すべて暑苦しく感じていました。子供だった僕たちは、きっとそんな気持ちが態度にも出ていたと思います。それでも、先生はいつも変わらない姿勢で僕たちと真摯に向き合ってくれて、どんな問題にも真剣に対応してくれました。
そんな先生のブレない姿勢にいつしか憧れを抱くようになり、中学校を卒業する頃には、将来は学校の先生になりたいと思うほどでした。多感な中学生時代に本気で向き合ってくれる大人と出会えたことに感謝すると同時に、僕も本気で人と向き合う覚悟ができました。現在本業の傍ら、靴作りの講演や授業で積極的に学生と関わるようにしているのも、先生のようなかっこいい大人でありたいと思っているからです。先生とは長い年月を経た現在も連絡を取り合っていて、今も良き理解者の一人です。

ーシューズデザイナーとしてのお願い。授業で取り入れてほしいこと

靴は命を運ぶ道具です。今の時代は誰もが靴を履いていて、どこへ行くにも靴が必要です。靴は人生のパートナーと言っても過言ではありません。そんな誰にとっても大切な靴をつくる仕事には、いつも実直に向き合わないといけないと思っています。
また、靴を通してものづくりの大切さや、感謝する気持ちを育むこともできます。実際、大阪の西成高校では来期から地場産業である靴・革についての授業がはじまり、僕自身も担当講師として靴に関する様々な歴史や、足・靴の大切さなどを教えることになっています。靴作りが地場産業ではない学校でも、自分の足がどうなっているかを測定したり、靴の正しい履き方、選び方などを学ぶことができる授業も取り入れてほしいと思います!

ー子どもの頃に担当してくれた学校の先生へ。今、伝えたいこと

学生時代、先生が僕たちの気持ちに寄り添い、相談に乗ってくれたことを、靴づくりを通して教える側になった今、よく思い出します。そして、自分自身も教育現場で靴づくりを教えていて気付いたことは、「教えているのではなく、教わっている」ということ。先生もこういう気持ちで接してくれていたのかなと思いながら、僕も生徒に寄り添い、共に学んでいける環境づくりに励んでいます。大人になった今でも様々な気づきをもらえていることに心より感謝申し上げます。
『足踏みしてても靴底は減る!』この言葉のように、一歩一歩前へ歩んでいけるように日々精進致します!!!