ヤッター先生コラム vol.7「校則って、誰のためにあるんだろう?」

【公開日】2026年8月

ヤッター先生の経歴:矢田 雅久氏。都内公立で43年間教職を執り、その間、2校で14年間校長を勤める。また、東京都で教育研究員・教員研究生・開発委員、品川区で校長会会長・就学相談委員長等を歴任。現在、品川区教育委員会で教育アドバイザーとして勤務。※こちらのコラムでは学校の先生からいただくお悩みに対して、ヤッター校長先生にご回答いただいていますが、ご紹介する回答内容が全ての場面や児童に対して有効であるということではありません。お悩みに対する対応方法は児童やクラスの実態により大きく変わるため、ここでは、取り入れていただきやすい具体的な対応策を挙げていただきましたので、ご参考にしていただけますと幸いです。

制服、髪型、スマホ、下着の色。 ニュースで「ブラック校則」という言葉を見かけるたび、「うちの子の学校のあのルール、意味あるのかな」とモヤモヤしたことはありませんか。

一方で、学校の先生たちは何を考えてルールをつくっているのか。その中身を聞く機会は、なかなかありません。

今回は、長く学校現場に立ってきた先生に、校則の「本音」を伺いました。

Q. そもそも「校則」って、何のためにあるんですか?

まず、小学校ではあまり「校則」とは言わないんです。多くの学校が「学校スタンダード」と呼んでいます。

スタンダードは、英語のとおり「基準」「標準」という意味です。その学校で教育活動をよりよく進めていくために、全校でだいたい揃えておくルール。そういうニュアンスですね。

ただ最近は、こんな声をよく聞くようになりました。

  • 「なぜそこまで細かく決めるのか?」
  • 「何でも一律に揃えるのは没個性ではないか?」
  • 「学校が管理しやすいようにしているだけでは?」

児童生徒からも、保護者からも言われます。そして学校側も、実際に見直しを進めているところです。

Q. 見直しが進んでいる、というのは?

きっかけは、文部科学省が「生徒指導提要」を2022年に20年ぶりに大きく改訂したことです。ここで、校則について「児童生徒が主体的に守るもの」という視点が強く打ち出されました。

📘 文科省が示す、校則の存在意義と基本原則

  • 教育的意義:集団生活の規律を学び、社会規範を遵守する態度を養うためのもの
  • 必要かつ合理的な範囲:「社会の常識」や「時代の進展」に照らして、説明できる合理的な範囲であること
  • 周知の徹底:内容や必要性、違反時の対応基準を、入学時などに事前に生徒・保護者へ伝えること

 

改訂の3つのポイント

1. 絶えざる見直しの明文化 校則は一度決めたら終わりではなく、社会の変化や児童生徒の実情に合わせて積極的に見直すもの、と位置づけられました。内容や必要性について、学校・児童生徒・保護者が共通理解を持つことが重視されています。

2. 児童生徒・保護者の参画 「自分たちのルール」として捉えられるよう、つくる・変えるプロセスへの参加が強調されました。児童会・生徒会での議論、保護者アンケートなど、意見を反映する仕組みづくりが推奨されています。ルールを無批判に受け入れるのではなく、その根拠を自分たちで考えること自体が、民主主義を学ぶ大切な教育活動だ、という考え方です。

3. 公開と周知の徹底 不透明な「ブラック校則」にならないよう、透明性を高めることが求められています。体罰はもちろん、理不尽な内容や特定の生徒を追い詰めるような指導への注意も促されました。髪型や服装の規定についても、個人の尊厳や性の多様性に配慮した柔軟な対応が求められています。

 

つまり校則は、「固定された不変のもの」ではなく、「その時々の最善を求めて、対話を通じて更新し続けるもの」へと変わってきているのです。

Q. 先生ご自身は、校則をどう考えていますか?

まず前提として、「児童生徒の自主性を大切に」「保護者の意見も取り入れて」と言っても、今風のことを何でも良しとして取り入れることではないと思っています。

校則は、成人が法律のもとで自己責任で社会生活を営むこととは、まったく違うものです。あくまでも学校という社会の中で、小・中・高それぞれの校種や、その学校の「教育のねらい」を達成するために、児童生徒の発達段階を考えてつくるべきものです。

そして何より、児童生徒本人が納得していること、そして次の社会(小学生なら中学校、中学生なら高校や社会、高校生なら大学や社会)に出るための準備ができること。ここが重要だと考えています。

Q. 「これだけは外せない」という中身はありますか?

最低限、この4つは必要だと考えています。

① 自他の人権を尊重すること(自分と他人の、心と体を大切にする)

  • いじめへの対応(身体的・精神的な攻撃、誹謗中傷はしない)
  • 多様性の受容(異なる考えや意見、性別、国籍、特性を持つ人を排除しない)

② 学習権の保証と環境の維持

  • 自分だけでなく、他者が安心して学べる権利を守る
  • 授業の妨げになる行為の自制(私語や自分本位の行動を控え、他者と協力して学習に取り組む)
  • 公共物の愛護(学校の施設設備や、他者の持ち物を大切に扱う)

③ 安全の確保と心身の健康(生命を守る最低限の規律)

  • 危険行為の禁止(暴力、校内での危険な行為、立ち入り禁止場所への進入)
  • 生活リズムの維持(遅刻・欠席をできる限りせず、心身を整えて登校する。登下校の安全。時間の厳守)

④ 集団生活における合意形成

  • 学校という社会の一員として、責任ある行動をとる。民主的なルールを守る

Q. 校則をつくるとき、変えるとき。大人は何に気をつけるべきでしょうか?

7つ挙げたいと思います。

①教育的な意図が明確で、児童生徒や保護者に説明できること。 納得感が何より大事です。

②「不易」は守りつつ、変化に対応できる内容にすること。 時代や社会が変わっても変わらない価値観は守る。でも中身は更新できるように。

③児童生徒や保護者が「教師とともに考え、変化させていくプロセス」に参加できること。 与えられたルールを守るのではなく、自分たちで「より良い学校生活」のためのルールを考える。そうすることで、自らつくったルールを守ろうとする態度、自らを律する姿勢が育ちます。柔軟にブラッシュアップできる仕組みも必要です。

④学校の中だけで通用する「ガラパゴス的」なルールにしないこと。 社会でも通用する常識をもってつくる。

⑤困ったときにいつでも議論できる仕組みがあること。 不明な点や不都合が生じたら、教師・児童生徒・保護者で話し合って柔軟に対応できるように。

⑥教師間でも、あらかじめ共通理解を図っておくこと。 児童生徒や保護者の意見を取り入れるのはもちろんですが、学校として先の「根底にある精神」と「最低限の必要事項」は守る。ただしその際、教師が指導しやすいだけの内容や、一律のものにならないように配慮すること。ここは強く言いたいところです。

⑦最終的な決定権は校長にある、という点を理解していただくこと。 基本は協議のうえで共通理解をつくりますが、最後の責任の所在ははっきりさせておく必要があります。

 

🔍 もう少し詳しく:校則の法的根拠

「そもそも校則って法律で決まっているの?」という疑問への答えです。少し専門的な話になります。

実は、「校則を定める」という条文は法律にはありません。「学校運営の責任」と「包括的な裁量権」に基づく、という解釈がされています。

  • 学校の設置者(自治体や学校法人)には、施設を管理し、教育目標を達成するために必要な規則を定める権利がある
  • 学校教育法第37条第4項:「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」(中学校は第49条、高等学校は第62条で準用)。学校の内部規則として校則を定められるのは、この権限に基づくものと解されています
  • 学校教育法第11条:「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」
  • 学校教育法施行規則第26条で、児童生徒への懲戒が校長の職務として位置づけられている

この「教育上の必要」を具体化したものが校則である、と解釈されるわけです。校長が行える懲戒は、教育的配慮のある範囲で、かつ体罰を伴わないことが前提となります。

懲戒の具体例:口頭での注意・指導、校則違反に対する指導、校則で禁止した物品の一時的な預かりなど

Q. 校則があることの、メリットとデメリットは?

○ メリット

いちばんは、規律ある学校生活の維持と、安全性の確保です。

  • 全員が同じルールを守ることで、安心・安全な学習環境が保たれる。基準がはっきりするので、指導もしやすい
  • 社会に出る前に、マナーや規範意識を養える。集団生活でのルールの学習になる
  • 服装や髪型、持ち物に一定の基準を設けることで、家庭環境の格差が見えにくくなる
  • 服装に基準があることで、機能性や安全性が高まり、通学の安心・安全を支える

 

× デメリット

個性の制限。そして、時代や社会の流れに合わない規則が残ってしまうことによる弊害です。

Q. これから見直しが必要なのは、どんな校則でしょう?

具体例を挙げてみます。

多様性への配慮

男女別の制服の強制/地毛の色の申告や制限/ジェンダーフリーに関する内容/特別な支援を必要とする児童生徒への配慮

健康への配慮

防寒着(カーディガンやコート)の禁止/食に関する強制(完食しないとおかわりができない、など)

安全に関する配慮

自動車やバイクでの通学の禁止/届け出のない自転車での通学(ヘルメット着用等の努力義務は遵守)/通学時のイヤホン・ヘッドホンの禁止

個性に関する内容

服装や下着の色(透けて見えないように)/髪型/髪色・加工/学習に専念できないものの持ち込み(特にスマートフォンの持ち込みや使用。基本的に校内では使用禁止)

 

――ただしこの「個性」の項目は、児童・生徒・保護者・学校で十分に意思疎通を図りながら検討し、合意をもって校則にしていくことが必要です。一方的に決めていいものではありません。

なお、社会における禁止事項や一般的なマナーは、校内でも守るのが当然のことだと考えています。

Q. 小学校・中学校・高校で、違っていいんですか?

もちろんです。むしろ、違って当然だと思います。

学校は学問を学ぶ場所であり、社会性を身につける場でもあります。児童生徒の発達段階に合わせてスタンダードや校則が変化していくのは、自然なことです。

小学校は、発達段階から考えて自主性に任せるのがなかなか難しい。だからある程度厳しめに、学校としてのスタンダードを決めて守らせていくことが必要です。

中学、高校と年齢が上がるにつれて、「学校とは本来どういう場所なのか」を生徒自身がよく考え、自主自立の精神で個性を出しながら、どうしていくのが大切かを考えさせていく。そういう変化が必要になります。

校則は、固定された不変のものではない。 その時々の最善を求めて、対話を通じて更新し続けるもの。

お子さんの学校の校則、一度お子さんと一緒に読んでみませんか。 「なんでこのルールがあるんだろう?」と話し合うこと自体が、実はいちばんの学びなのかもしれません。