ヤッター先生コラム vol.1「じっと話を聞くことができない、座っていることができない児童へのフォローの仕方を教えてください」

【公開日】2025年2月

ヤッター先生の経歴:矢田 雅久氏。都内公立で43年間教職を執り、その間、2校で14年間校長を勤める。また、東京都で教育研究員・教員研究生・開発委員、品川区で校長会会長・就学相談委員長等を歴任。現在、品川区教育委員会で教育アドバイザーとして勤務。※こちらのコラムでは学校の先生からいただくお悩みに対して、ヤッター校長先生にご回答いただいていますが、ご紹介する回答内容が全ての場面や児童に対して有効であるということではありません。お悩みに対する対応方法は児童やクラスの実態により大きく変わるため、ここでは、取り入れていただきやすい具体的な対応策を挙げていただきましたので、ご参考にしていただけますと幸いです。

じっと話を聞くことができない、座っていることができない児童へのフォローの仕方を教えてください

このご質問への回答は、特別な支援を必要としていない児童への対応と、特別な支援を必要とする児童への対応の2つに分けてお答えします。

★特別な支援を必要としていない児童への対応について

こちらは3つのアプローチ方法をお伝えします。

①児童を惹きつける力を身につける

保育園や幼稚園では、じっと座って話を聞く時間はあまりなく、他の園児と関わり合いながら自ら活動して学んでいます。ですから、1年生 になったばかりの児童に「もう一年生だから、授業中は立ち歩かずに黙って先生の話を聞きましょう。」とか「静かにしましょう。」と言 ったところで、急にできるようになる筈はもちろんありません。ではどうするか。突然ですが、「教師は五者であれ」という言葉を知っていますか?五者とは、教育者(当然ですね)、学者(せめて一つの教科は極めて欲しい)、医者(児童の健康や医療についての知識も少しは持って欲しい)、哲学者(自分なりの教育哲学を持って欲しい)、役者(児童に興味関心を持たせて楽しく学ばせるための演技力を持って欲しい)のことを指しますが、私は、教師には何よりも「役者」のスキルが必要だと思っています。大声で喋っている児童に聞こえるように、さらに大 声で指導をすると、ますます児童も大声で話し出すのは当たり前です。児童が大声を出している時は、教師はわざと聞こえないくらいの小さな声で話してみたり、強弱をつけて話すことが必要です。ぜひ、子供たちの前では教師が役者になって、大袈裟に驚いたり、感心したり、喜んだりしてみてください。声の大小、強弱、声色を使い分け、演技力(指導力)で児童を惹きつけて欲しいと思います。人形劇や手 品、面白いお話、手拍子でのリズム遊びを取り入れてみるなど、まずは、知恵と演技力、視覚、聴覚、触覚をフル活用してみてください。

②興味を持続させる授業力を身につける

児童の興味を持続させて学習に取り組ませるには、導入時に、この授業は面白そうだ。これから楽しそうなことが始まるぞ、と思わせることが重要です。お話や挿絵、資料、実験、クイズなどを取り入れるのも有効です。次に、わかりやすく簡単なことから入り、スモールステップで取り組める教材を用いたり、座学だけではなく作業やグループ学習をふんだんに取り入れます。最後に、「できた」「分かった」という達成感を得られるようにすることです。まさにこれが教材研究、授業研究といわれることです。そして、授業は緩急をつけながら、必要に応じて教師が役者になりきって授業をすることが大切です。低学年は5分、中学年は10分、高学年でも15分に1回の頻度でインパクトのあることをしたり視点を変えてみたりして、児童を惹きつけてみましょう。

③他者の学習権を奪ってはいけないことを徹底して教える

この③が最も大切なことです。児童に、学級で学んでいるのは自分だけではないこと、「学びたい」「わかるようになりたい」と思って授業に取り組んでいる友達がたくさんいることをしっかり伝えましょう。「他者の学習権を奪ってはいけない」ということを徹底して教えます。そして、そのためには「教師や級友が説明や発表している時には絶対に喋らないこと。」「教師の許可なく、むやみに立ち歩かないこと。」とにかく、「他者の妨害をしないこと。」を徹底して言い聞かせます。低学年のうちにここを理解していないと学級崩壊や学年崩壊のもととなりかねません。ですので、児童の実態や性格によって多少強めの指導をしなければならない場合もあるかもしれませんが、低学年のうちにしっかりと理解させておきたいものです。

★特別な支援を必要とする児童への対応について

まずは学校や家庭での日々の児童の様子、臨床心理士やカウンセラー、医療等の専門機関からの情報やアドバイス、WISK等の検査の結果から総合的に児童の実態を把握して指導方法を考えていくことが必要です。その時には管理職はもちろん、支援教室の教師、専門員、生 活指導主任、養護教諭、担任等で校内の特別支援の専門委員会を定期的に開催し、児童の情報を共有、それを基に対応策を考え、学校全体で共有します。学校としての対応策がある程度できた段階で、保護者ともよく話し合い理解を得た上で、家庭と学校両方で個々の児童に対してどのように対応するかを決めて丁寧に指導していくことが必要です。特別な支援を必要とする児童がいたり、お喋りや立ち歩きが治まらない児童がいる時に何よりも大切なのは、他の児童に波及させないことです。他の児童には「人にはみんな個性があります。得意なことや苦手なこともみなそれぞれが違うはずです。ですから、全てのことにおいて、何でも同じような基準で評価することはできません。怒ったり、褒めたりするときにも違いがあります。」と伝えるなど、学年の発達段階に応じて指導します。ただし、他者の学習権を奪うような行 為に関しては、多少の差はあっても基本的には許されないということを、しっかりと伝えていくことが必要だと思っています。